過ばっ気によるpHの低下とエアー抜きに付いて

しばしば透視度が良好な現場では処理水が酸性に傾き、基準値であるpH5.8を下回る事がよくある。

単独浄化槽や小型合併浄化槽に置いては、水質汚濁防止法の適用外になるので、細かく指摘される事は少ないが、やはり基準がある以上はその基準値内になるように配慮がするの事が望ましい。


処理水のpH低下の要因

処理水のpHが下がる要因であるが、曝気槽での硝化反応があげられる。硝化反応に関してはまた詳しく別記事を書こうと思います。

端的には、アンモニア性窒素(アンモニア&アンモニウムイオン)が亜硝酸菌(アンモニア酸化細菌)によって酸化することで、亜硝酸性窒素に変化。そしてその際に水素イオン(H3O+ オキソニウムイオン)が生成することでpHが低下する。

また亜硝酸菌のアンモニア酸化の活性をみると、曝気槽内のBODが低いほど、亜硝酸菌(アンモニア酸化菌)の活性があがると言われている。
つまり曝気槽の水の透視度が高いほど、硝化反応が効率よく進むため、pHの低下を招きやすい。

嫌気ろ床接触ばっ気方式などの低負荷現場では、1次処理(嫌気ろ床)でBODが90%以上除去されるケースもあるために、曝気槽への流入BODが低く、曝気槽での硝化反応によりpHの低下を招きやすい。更に非常に低負荷の現場では1次処理(嫌気ろ床)でT-BOD(C-BOD&N-BOD)がほぼ100%除去される現場もあり、その様な現場では曝気槽や処理水はpH7.0付近になる。


反対に曝気槽への汚泥流入が多くあり、曝気槽の有機物(≒C-BOD)が高くなると、硝化反応は抑制され、pHは低下し難くなる。
さらに汚泥流入があると言うことは、合わせてアンモニア性窒素も流入してきていると推定出来るため、曝気槽や処理水のpHは上昇すると考えられる。


●pHの低下●
亜硝酸菌によるアンモニア酸化反応での水素イオンの生成
2NH₄⁺ +O ₂  → 2NO ₂⁻ +2H ₂ O+4H ⁺

●pHの上昇●
タンパク質や尿素の流入によりアンモニアの生成→アンモニウムイオン+水酸化物イオンの生成

NH3 + H₂O → NH₄⁺ + OH⁻



↓その他のpHの反応↓
●pH低下の要因●
・異常な基質の流入(薬品など)
・硝化反応(アンモニア酸化)
・VFA(揮発性低級脂肪酸)や炭酸(二酸化炭素)の生成

●pH上昇の要因●
・異常な基質の流入(薬品など)
・脱窒反応
・曝気によるVFA(揮発性低級脂肪酸)や炭酸(二酸化炭素)の揮発
・アンモニア生成(可溶化)



エアー抜きの使用方法(メリット)

嫌気ろ床接触ばっ気方式(構造例示型)の浄化槽には、エアー抜きと言われる設備(機能)があり、下記のような機能がある。

①pHが低下した際に、エアーを抜くことでDOを下げ、硝化反応を抑制し、pHを上昇させる(中性に近づける)
→合わせて循環エアリフトポンプが付いている型式では、循環水を回して脱窒させることでpHを中性に近づける方法や、間欠曝気運転を行う方法がお勧めである。

②曝気槽内の曝気強度を下げることにより、旋回流を弱め、生物膜の生成を促す
→生物膜が増える事により、透視度の向上が見込める。こちらも間欠曝気運転で代用が可能なために、間欠曝気運転をお勧めします。

③エアーを抜きDOを下げて、低DO運転にする(主に後生動物の抑制)
→下記にデメリットの記載あり

④循環エアリフトポンプがない浄化槽には、エアー抜きからエアーを取り、エアリフトポンプを作成し、循環水を確保することが出来る(上級武士篇)

⑤循環エアリフトポンプのある型式の浄化槽では、循環水量の微調整が難しい場合もあるため、エアー抜きを合わせて調整することで、循環水量の微調整が可能となる。
→ただし様々な要因で、エアーバランスが崩れやすく、循環水量が変化しやすい。

⑥嫌気ろ床接触ばっ気方式(構造例示型)で、嫌気槽に移送エアリフトポンプを取付て、嫌気槽を流量調節の機能を持たせる(変態武士レベル)
→仕切りの破損などが無いように気をつけてください。


エアー抜きのデメリット

上記の様に、エアー抜きを行う事でpHの低下を抑制する事が可能であるが、デメリットも有るので紹介します。


①エアー抜きを行うことで、ブロワーの圧力負荷が減ることで、消費電力が増えてしまう
(下記画像参照 ※日東工器様より借用しています ※LA-80E)

②エアー抜きからエアーが抜ける際にボコボコと水の音が大きい。
→エアー抜きにディフューザーを取付ける方法もあります。
https://youtu.be/5YaDudPwbXU

③低負荷の現場以外では、年間を通した安定的なエアー抜き量の維持が難しい。
→エアー抜きでの、抜く量が変動する事が多く、生物膜生成の為のエアー抜きや、低DO運転の為のエアー抜きでの運転が非常に困難である。対策としては別記事にある、コンセントタイマーを利用した間欠曝気運転では、安定した運転が可能であるため、経済的(消費電力)にも環境的(温室効果ガス排出削減)にもお勧めである。


2022.6 執筆中

浄化槽侍JokerSOWによる小型合併浄化槽 透視度改善BLOG

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