小型合併の間欠曝気運転の導入の目安とポイント

間欠曝気運転のポイントと、導入の可否、ブロワー稼働時間の目安を記載します。
間欠曝気運転のメリット・デメリットに付いては別記事をご覧ください。

導入の目的と目安


間欠曝気運転を導入するにあたり、処理方式や型式によって導入が容易・難しいがある。

まず何を目的に導入するかにもよって異なってくる。

●電気料金削減目的(二酸化炭素排出量削減)
●透視度改善
→低DO運転により後生動物の活性を弱める(生物膜の食害防止)
→生物相の立て直し
→生物膜生成の促進
●pH低下の対策


上記の対策として導入する事が主になると思う。
それぞれの導入目的に合わせて、目安を記載する。


※注意※
流入基質に異常がある場合は間欠曝気運転の導入は難しいと思います。

(例)糖尿病や腎不全患者による尿の成分に問題があり、BOD/N/Pなどバランスが悪い。

(例)洗剤などの使用が多く菌の繁殖が阻害されている。かつ使用者に洗剤使用に付いてアドバイスをしても改善されない。

(例)流入水量が計画値の1.5倍以上に多く、HRT(水理学的滞留時間)の確保が出来ない。

(例)異常な過負荷で、常時運転でもDOが1.0mg/L以下になる様な浄化槽。



●電気料金削減目的(二酸化炭素排出量削減)


間欠曝気運転の大きなメリットとして、電気料金削減と二酸化炭素排出量削減があげられる。

皆さんが考えられておられる様に、低負荷現場であれば容易に導入が可能である。

曝気時間の目安や曝気パターンに付いては、別記事を参照ください。随時事例を追加予定です。


①構造例示型(嫌気ろ床接触ばっ気方式)


→人員対比が0.5以下、かつ流入水量が計画値の0.7以下であれば、比較的容易に運転も可能であるので、早目の導入をオススメします。
この様なケースでは年間平均でブロワーの稼働時間をおおよそ50%以下に抑える事が出来る可能性が高いです。



②コンパクト型

→人員対比が0.4以下、かつ流入水量が計画値の0.5以下であれば、運転は可能と思われる。
この様なケースでは年間平均でブロワーの稼働時間をおおよそ66%以下に抑える事が出来る可能性が高いです。


③モアコンパクト型

→コンパクト型と同様に、人員対比が0.4以下かつ流入水量が計画値の0.4以下であれば、運転は可能と思われる。
この様なケースでは年間平均でブロワーの稼働時間をおおよそ66%以下に抑える事が出来る可能性が高いです。

ただしモアコンパクト型では元々散気量が少なくても運転が出来る型式もあるため、ブロワーの消費電力が元々少ない機種だと、消費電力削減(二酸化炭素排出量削減)のメリットは薄れてしまいます。


コンパクト型やモアコンパクト型では、ブロワーが2口タイプで自動逆洗機能が付いたものや、流量調整機能が付いたものがあるが、それらを加味してコンセントタイマーの時間を設定する必要がある。

(例)自動逆洗がブロワー稼働後3時間後に10分間動作する設定にも関わらず、稼働時間を「1時〜3時&5時〜7時&9時〜11時&13時〜15時」などの様に2時間毎の稼働にしていると、逆流が行われない場合がある。

(例)流量調整付きの浄化槽で、ブロワーがオフの状態で流入があると満水になったり水位が上昇する。その状態でブロワーが稼働すると、設定していた循環水量や移送水量が想定よりも多くなってしまう。そのために水位が高い状態の循環水量などを計算にいれる必要がある。




●透視度改善


①低DO運転により後生動物の活性を弱める(生物膜の食害と解体の防止)


透視度が低下する1つの要因として、生物膜の生成不全が挙げられる。
その生物膜の生成不全の要因として挙げられるのが、サカマキガイやミジンコによる生物膜への食害や解体である。
詳しくは上記の別記事を参照して欲しいでゴザル!


②生物相の立て直し


糸状菌の発生などで生物相が何らかの形で安定しない場合は、シーディング剤の使用も1つの有効な方法だが、間欠曝気運転で嫌気の時間を長くして、通性嫌気性細菌を優位にしてから、散気時間(DO)を増やしていくやり方もある。

拙者の仮説ではあるが、曝気槽の曝気を停止することで、曝気撹拌とDOがなくなる事で通性嫌気性細菌の生物膜量の増加となる。そして曝気を再開させることで通性嫌気性細菌が酸素での呼吸を行うようになる。通性嫌気性細菌は嫌気呼吸よりも好気呼吸の方がATPの獲得が3〜4倍高いと言う情報もあるので、そのことにより同化異化が活発(活性があがり)になり、透視度が改善すると考えているでゴザル!


③生物膜生成の促進


対流がない時間が長ければ、接触材への生物膜の生成が多くなると思われる。
拙者の仮説ではあるが、菌から出されるEPS(細胞外高分子物質)が対流で流されることなく、より強く粘着することにより生物膜の生成が促進されると考えている。

●pH低下の対策

低負荷で窒素の流入が多い現場では度々、pH5.8を下回る事がある。
多くの場合、尿の流入割合が高く、尿に含まれる尿素が分解酵素であるウレアーゼによって、アンモニウムイオン(pHによってはアンモニア)に分解され、そのアンモニウムイオンをアンモニア酸化菌(亜硝酸菌)が酸化することにより、水素イオン(オキソニウムイオン)の生成がおこり、pHの低下を招く。
この様に、尿の流入割合が高い現場では、C-BODでの脱窒などのアルカリ度の生成も少ないため、循環水量を増やしても対応出来ないケースが多い。

そのためにコンセントタイマーを取付、散気時間を調整することで、低DOにしてpHの低下を防ぐ事も可能である。



間欠曝気運転のポイント



①循環水量はなるべく停止した状態の方が安定した運転が可能である。
→曝気槽から嫌気槽へのDOの持ち出しが減ると同時に、嫌気槽から曝気槽への低DO水の流入も減るため、ブロワーの稼働時間を少なくすることが出来る。


②ブロワーが連続で停止する時間帯を5時間〜10時間確保するようにする。

→曝気槽をなるべく長く低DO状態にすることで、サカマキガイやミジンコなどの後生動物の活性を弱める。そのことにより生物膜の生成を促す。

→上記にもあるが、対流がない時間が長ければ、接触材への生物膜の生成が多くなると思われる。拙者の仮説ではあるが、菌から出されるEPS(細胞外高分子物質)が対流で流されることなく、より強く粘着することにより生物膜の生成が促進されると考えている。


③点検の時間帯はなるべくブロワーが停止してから時間が経ち、DOが低いと見込まれる時間に測定する。

→例としてブロワーの稼働時間が「1時〜3時&5時〜7時&17時〜19時&21時〜23時」だとすると、「7時〜17時」は10時間ブロワーが停止しており、曝気槽内のDOが低下していると思われる。実際は夜間の方が生活排水の流入が多いが、夜間にブロワーを稼働させているために、昼間の方が低DOになると思われる。かつ測定時間を17時前にすることで、1番DOが少ない時間に測定出来る。実際に経験を積めば17時前の測定時間でなくともDOの変化が掴めるようになる。
DOが1番低い状態で、曝気槽の雰囲気や透視度を測定すると、稼働時間の増減の設定をする事が容易になる。

ただし、点検時にはブロワーを稼働させて、異常がないかの確認は必要である。


④接触材に生物膜の生成が見られるか確認する

→ブロワーが稼働して曝気中であれば、ブロワーを停止させて接触材や壁面、スカムの生成などを確認する。間欠曝気運転を導入して1ヶ月経っても生物膜の生成が見られなければ、何かしらの異常があると推定できる。例としては、サカマキガイなどの後生動物の影響や洗剤の影響、異常な低負荷や異常な高負荷による生物膜の解体と可溶化など。


⑤1次処理(嫌気槽)での処理状態を把握する

→清掃後などは1次処理(嫌気槽)のバイオマス量が減ることにより、嫌気消化が不良となり曝気槽への流入BODが高くなる。それに対応するためにブロワー稼働時間を長くする。

→春から夏にかけて嫌気槽の、スカム・汚泥が可溶化することにより曝気槽への負荷が高くなる傾向にある。その様な時は同じくブロワー稼働時間を長くする。

しかしまだ運転指針の確立は出来ていないが、曝気槽への負荷が高い場合でも、ブロワーの稼働時間をそこまで増やさずに、間欠曝気運転を取り入れる事が可能な場合もある。おおよその運転方法が確立できれば追って報告するでゴザル!


また水温が高くなり、スカム・汚泥の可溶化以上に嫌気槽での処理が高くなった場合は、曝気槽への負荷が低下するので、その際はブロワー稼働時間を短くする。

これらの点で重要なことは、嫌気槽の処理状況・処理水を把握することでゴザル!




2022.7 公開
→執筆中


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